紅尻勉強会のお仕置き

「はい、問題なし」

うぅ、やはり…。

「というより、むしろたたいてあげたくなるお尻だわ」

たたいてあげたくなる……ってこの塾に来てから時々言われるけど、私のお尻ってそんなにたたきたくなるようなお尻なのかしら。三上先生は、ベッドに横たわっている私のお尻を軽くたたくと、下着を引き上げてくれた。

「ま、あなたもお尻の体罰が目当てでここに来たんでしょ?」
「え、いえ」

そ、そんなはっきり言われても…。

「別に隠すことはないわ。たいていの子はそうだもの」

それは……確かにそうみたいだけど。

再度お尻をたたく三上先生の手に促されて、立ち上げる。

「ただ、少しは注意しないと今度みたいなことになるから気をつけなさい」
「…はい」

何を言って良いかわからない私は、とりあえずそう答えた。そして、三上先生の印が押された「お仕置き票」を受け取る。「お尻たたき券」とも呼ばれているその紙に記されているのは、「罰板60回」の文字。
私は、その罰板60回を受けるために、診察室から廊下へ出た。

私が、この学習塾「紅尻勉強会」に入ったのは、3ヶ月ほど前。以前から同級生たちの間で「厳しい塾」として有名で気になっていたんだけど、その厳しいという内容を聞いて、どうしても入りたくなったのよね。

そう、紅尻勉強会では、ちょっとしたことですぐに体罰。それも、それもお尻丸出しで何十回もたたかれる、と聞いたから。最初はいまどき塾で体罰なんて信じられなかったけど、何人かの友達にそっと聞いてみると、実際に通っている子もいて噂は本当みたい。しかも、通っているのは……お尻をたたかれたい、と想っている子ばかりだって。そう、私のように……。

廊下に出ると、隣の「お仕置き室」のドアの前にある椅子に腰掛けた。体罰を受ける時は、まず診察室でお尻たたきに耐えられるか検査され、その後ここで準備ができるまで待っている決まり。学習塾にまさかこんな設備があるなんて……

今待っているのは私一人だから、数分もすれば準備ができて呼ばれるはず。

それにしても、今回はまいったわね。罰板60回なんて。
大きくて厚みもある樫の木で作られた罰板。長さは60cm位、手元の方が細くてお尻をたたく先の方は掌より広い。お仕置き室だけでなく各教室にも置いてあって、授業中に話を聞いてなかったりするとその場で服の上から数回たたかれることもあるんだけど、服の上からでもかなり痛い。初めてたたかれる子の中には、みんなの前で泣き出す子もいるし。
私も、先月初めてお仕置き室で罰板20回の罰を受けた時には、本当に死ぬかと思った。

今回は、その罰板を60回も……。まぁ、授業中寝てて宿題もやってなかったから、仕方ないのかもしれないけど……。

今日出すはずの宿題をやってないことに気がついたのは、昨日の夜。その時は、今朝やれば良いかと思ってさっさと寝てしまったんだけど、いざ今朝になると時間もあまりなかったし面倒になっちゃって。それに……少し位お尻をたたかれるのも良いかも、なんて思って結局やらないまま学校に行っちゃったのよね。
で、放課後に紅尻勉強会に行ったんだけど、あろうことか授業中に寝てしまって。その上、宿題もやってなかった、ってわけだから、「少し位」のお尻たたきじゃ許してもらえないわけで……。

「入りなさい」

澄んだ声にあわてて顔を上げると、お仕置き室の開いたドアの所に事務員の伊吹さんが立っていた。普段は、事務室で事務をしている伊吹さんだけど、お仕置きの時間になるとお仕置き室で助手をしているのよね。
大学を出たばかりで、生徒にとっては優しいお姉さん。ただ、さすがに今はその伊吹さんの顔にもいつもの笑顔はない。

「はい」

仕方ない、行きますか。
私は、軽く息を吐くと立ち上がった。

お仕置き室に入ると、まず目に飛び込んでくるのは、革張りのベンチ。真ん中辺りが少し出っ張った感じで、なぜかベルトのようなものが付いていたりするのは、このベンチが普通に座るためのものではないことを物語っている。
そう、このベンチはお尻を乗せてたたくためのお尻打ち台。罰板や鞭などでたたかれる時は、このお尻打ち台にお尻を乗せて、暴れたりするとベルトで拘束されてお尻をたたかれる。

「145番、石田理恵、罰板60回です」

伊吹さんにお仕置き票を差し出すと、伊吹さんは内容を読み上げ、部屋の隅のデスクに腰掛けている池田先生に手渡す。

「石田さん、罰板60回で間違いないわね?」
「はい」

池田先生の確認に、緊張しながら答える私。
ちょうど私のお母さん位の年齢の池田先生は、普段数学の授業をしている時も厳しい先生だけど、お仕置きの時にはさらに怖い先生なのよね。

池田先生は、お仕置き票をデスクのパソコンに読み取らせノートにも記入すると、壁にある投入口にお仕置き票を差し入れた。

「それでは、お尻を出しなさい」

立ち上がって、正面から私を見据える池田先生のこのお言葉が、お仕置き開始の宣言。これからは、池田先生の指示に従わないと、それでまた新たなお仕置きになってしまう。

私は、スカートをまくりあげると、お尻打ち台の盛り上がった部分にお尻を乗せた。そして、後ろに手をやって下着もずり下ろす。そのまま両手をお尻打ち台を抱え込むように組み合わせた。

「伊吹さん、罰板を」

手渡された罰板を持って、池田先生が私の横に立つ。

目を閉じて、両手でしっかりとお尻打ち台を抱え込む。思わず手でお尻をかばっちゃったりすると、最低でも鞭打ち10回。大変なことになるのよね。特に、今日みたいにたっぷりと罰板でたたかれた後に鞭打ちなんてことになったら……。

「始めてよいかしら?」
「はい」

緊張しながら答える私。池田先生が罰板を振り上げる気配に、思わずお尻に力が入る。

そして、第一打。少し強張ったお尻を叩き潰すような強烈な打撃に、息を呑む。少し遅れてくる、びっくりするくらい大きな反響。

さらに、息を継ぐ間もなく次の強打がお尻に振り下ろされる。

次々にお尻を襲う罰板。とにかく姿勢を崩さないよう、息を詰めながらひたすら耐える。

しばらくすると、お尻たたきのペースが少し落ちてきた。その分、一打一打を待ち受けるお尻に意識が向いてしまう。

お尻を襲う衝撃と痛み。そして、それに続いて全身に広がる……震動というか興奮。もちろんものすごく痛いんだけど、でも特にたたかれる間なんかには……次の一打をどこか待ち望んでいたりして。

私が時折あげる呻き以外は物音一つしないお仕置き室で、ひたすら続くお尻たたき。時折、当たり所が悪くてしばらく息もできない位の痛みに襲われる。

「30回」

強烈な三連打の余韻に響く息吹さんの声。やっと、半分……。

「っ!」

そこで一息つこうとした私は、不意にお尻を襲う31打目に声にならない悲鳴を上げた。

固まる私の背後に感じる、池田先生がお尻に狙いを定める気配。息を止めた次の瞬間、振り下ろされる罰板。

この池田先生との駆け引きというか、呼吸みたいなのも難しい。一打一打、こちらの準備みたいなのができた時を見計らってたたいてくれることもあるし、逆にわざとそうしたタイミングを外して、少し気を緩めた瞬間に気配を殺していた強打が振り下ろされることもある。

っ!

お尻の真正面への強打。早いテンポの連打に身を硬くしていた私は、思わずお尻を押さえそうになり、慌てて両手をしっかり組み合わせる。

そして、最後の連打。いつも最後の方になると強烈な連打が待っているけど、今日は10回近く。息つく間もない連打だった。とにかく姿勢を崩さないよう、必死にお尻打ち台にしがみついてこらえるしかない。

「60回です」

やっと……終わり。

お尻は、痺れて凝り固まったように硬くなった感じ。少し動かすと痛みが走る。自転車で帰るのはちょっと辛いかも、なんて思いながら、お尻たたきの後にいつも感じる不思議な充実感に浸っていた。

その後、痛むお尻を何とかサドルに落ち着けて自転車で帰宅。夕飯の時も、なるべくお尻を動かさないようにしながら食べる。

ただ、あまりお尻を気にするそぶりも見せられないのよね。お母さんにどうしたのって聞かれても、まさか学習塾でお尻をたくさんたたかれてきた、なんて言えないし。

さすがに今夜はお風呂はパス。部屋で鏡にお尻を写してみると、一面青くなっていた。これは、数日は大変そうね。

ため息をついて椅子にへたり込みそうになって、あわてて止める。あまり急に動かさないよう、ゆっくりとお尻を椅子の上に……。

机の上にでも突っ伏そうと椅子を引いて机の上の本をさっとどけると、目にとまったのは本の下から出てきた一枚のプリント。

何これ?

手にとって見ると、なにやら数式や文章がたくさん書かれている。

まさか!?

やはり紅尻勉強会の宿題だった。そういえば、先週池田先生の授業で配られたんだっけ。って、池田先生!

嘘。明日まで……

しかも、提出期限は明日。この分量じゃ、どう考えても間に合わないわよねぇ。

どうしよう……。